『娼婦の部屋 不意の出来事』 by吉行淳之介

 

アンソロジーで読んだ「手品師」という作品がいたく心に残ったので、はじめて挑戦してみる。

これはすごい。

あまりにもせつない。

語彙のないボクにはそうとしか言えない。

特に恋愛をテーマに扱った最初の3篇、「娼婦の部屋」、「寝台の舟」、「鳥獣虫魚」はほんとうにせつなすぎて、読んでいてなんども呆けたような状態になってしまった。(それ以降の作品はやや難解でボクには上手く理解できなかった…)

 

そのせつなさが心にやさしく染み入りつつも、それが心の中で形を変え欲望になって暴れだしてしまうから、タチが悪い。

やり場のない哀しみと欲望を同時に残していくから、このひとり身には本当につらい。

人肌が恋しくてたまらなくなる。

 

そしてそれをもてあましたボクは今日も一人、酒の世界に逃げていく…

 

 

『幸福な食卓』 by瀬尾まいこ

 

吉行淳之介さんの作品ばかり連続で読んでると、精神のバランスを崩してしまいそうなので、救いを求めて読んでみる。

そして期待にたがわず見事に救われた。

ええ作品や。

あー、こんなに思いやりを持ちあえる関係って素敵だなぁ、としみじみ思う。

そして普段はそんなありがたさにも無自覚に生きているんだけど、ふとした瞬間にそれが実感できて、たまらなくいとおしい気分になるんだろうなー。

 

幸せに決まった形なんてあるはずがない。

「夫婦別姓にすると、家族の絆がなくなってしまう」とか、

「家長制があった昔はよかった…」みたいなたわけたことをいっている保守派の政治家とかに読ませてやりたい。

大切なのはそういううわべの形なんかじゃなくて、心のそこから相手のことを思える”思いやり”だろう。

大事な人に対しては一生そういうスタンスで向き合っていきたいな。